2020/11/02 17:55
「自分たちはどう在るべきなのか、ずっと迷っています」
そう話すドメスティックブランドのデザイナー「山内」のデザイナー山内さんは何度もそう話してくれた。
そしてその横でうなずいている奥様で共にブランドを運営する山内さんの目が優しかった。

山内の商品の一部(主に布帛製品)の縫製を弊社で請け負うことになり、もう三年くらい経つだろうか。
生産者の名前をタグにつけると聞いて「なんだ、よく在るメイドインジャパン好きブランドか」と大変失礼なことを思ったのを覚えている。
それから生産に入った時から全てが変わっていったのだが。

山内の前身はyamociというブランドでご本人がとても尊敬するデザイナーの影響を受けて「これぞアパレル」というようなアパレルブランドを立ち上げた、人を雇い入れ自分たちで服を作って販売していた。
かなりブラックな時期もあったようだがそれも時代と熱量で説明がつく。
熱の高い山内さんに服好きが集まった。
まさに「自分たちはファッションをやっている」という感覚だったんじゃないだろうか。
当時のことを山内さんに聞いたら、
「自分がマンションメーカーにいるときは徹夜してトワル(仮縫い)を仕上げていたり、サンプルを縫ったりしてる若手がいて、それを朝ひと目見て「んー、ダメだな」っていう。それがなんだかデザイナーって感じがした」と笑いながら答えてくれた。
ご自身のブランドyamociを運営している時もアトリエにベッドがあり無言の圧力で帰ることが許されないような空気感だったそうだ。
しかしそんなブランド運営を続けて数年してある感情が生まれる。
"すり減っている"
自分で雇い入れたメンバーは疲弊し、職人さんは低賃金で納期に合わせて働いている。
自分は好きでやっているがあまりにも時代錯誤なのではないか、なんの意味があるのだろうか?
そんなことを感じたそうだ、そんな時山内さんは1着のシャツに出会う。
偶然私の姉が勤めていた工場の先輩に当たる人が山内さんが発注したシャツを縫っていた。
その縫い上がったシャツを見て愕然とした。
なんと美しいシャツだろうか、自分もある程度縫製には自信があったが自分のそれとは全く違う出で立ちだったそうだ。
山内さんは当初技術の鍛錬ではセンスは養われないと感じていた、しかしそのシャツには技術とセンスが存分に詰め込まれていた。
「好きだからこそ出てくるセンスだと思う」
山内さんはそう語った。
そしてその瞬間からyamociは山内と名前を変え「日本人であること」というコンセプトになった。
自分は日本人として日本人の職人さんたちと共にあろう。
そう決めたのだ。
「迷い」から生まれるからこそメッセージ性は強い。
今は夫婦お二人で主に運営されているが、
山内さんは僕が名古屋のアトリエにお邪魔した時何度も「迷っています」と口にした。
ブランドについて
自分たちのあり方について
ファッションについて
常に山内さんは「迷っている」のだ。
しかし縫製工場の立場やブランドを運営するメーカー、商品を購入する消費者としてその迷いは全く感じない。
むしろこんなにも一貫したブランドがあるのだろうか?
そう感じていたから意外だった。
「山内さんも迷うんですね」というとこんなエピソードを話してくれた。
山内さんがブランドの運営について考えていた時「展示会」というものに違和感を感じていた。
自分が作った洋服を展示会を開いて仕入れに来てもらう、それが当たり前になっているがそれだと置いて欲しいお店なのかわからない。
そして作る側が偉いような印象にもなるし、そもそも物理的に地方のショップは東京まで自分のブランドの商品を見にくる時間もコストも取れないんじゃないか?
そんなことを「迷って」いた。
そんな山内さんを見かねた奥様が「じゃあ売りに行こう」と行って商品と山内さんをバンに詰め込んで走り出した。
自分たちでショップを回ってきちんと売っていく。
その時に始まったスタイルは今もそのままだ。
今ではそのスタイルが山内の定番となり、山内を取り扱いたいショップは逆に山内さんがくるのを待っているだろう。
山内さんが何度も口にする「迷い」という言葉は「磨く」という言葉なんじゃないか?
そう思うようになった。
何度も何度も磨くことでどんどん研ぎ澄まされて洗練されていく。
迷いは決して「ぶれ」ではなく1つのことを答えが自然に出るまで考えることなんだ。
そう思う。
Kazoku-Yaで売られている商品も山内さんらしくマイナーチェンジを繰り返しながら毎年出ている定番品も多い、
日本人であること。
このコンセプトについても、商品の形についても、ブランドのあり方についても、
今この瞬間も山内さんは迷っている。
そして輝いているブランドがさらに輝きを増すだろう、
僕は山内のTシャツを今年買った、だから来年も買おうと思う。
迷いの先に生み出されるプロダクトを楽しみにしたい。
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